北欧視察 2006.7.23~7.29 自由民主党市民クラブ 北野妙子
【 パリ市における少子化対策等 】

 
1.フランスの少子化対策について
〈少子化の現状〉
2005年:1.92

〈少子化対策の特徴〉
人口増加が課題となった第2次大戦後、家族問題省ができた。
UNAF(家族協会全国連合)などの全国7600に上るNPO組織が地域の意見を集約する一方で、年1回政府関係省庁・企業経営者・労働組合・文化福祉運動団体が集まって“家族会議”を開き家族関連問題の調整を行っている。
 フランスは欧米の主要国の中で、日本と比較して児童手当等の経済的支援策が最も手厚い。フランスの家族給付は企業からの拠出、一般社会税、国庫からの拠出など幅広い負担を財源とする「家族給付全国公庫」が担っている。
フランスの税制は、N分N乗方式が用いられており、累進課税が高い場合、子どもの数が多くなるほど所得負担が軽減される仕組みになっている。
また、在宅での保育サービスが発達しており、一定の要件を備えた者を登録する「認定保育ママ」が保育需要の約8割を担っている。

フランスでの家族政策予算はGDP比2.8%である。  
cf.日本は同0.6%
☆児童手当
                     
2.パリ市の少子化対策について 
 ― UNAF(家族協会全国連合)アニック・モレル氏との意見交換を通して ―

①概況
 女性の就労活動を容易にする施策:25~49歳の女性就労率は80%
多様な人生のあり方を受け入れる精神文化があり、41%は婚外子である。

②休暇制度
・法定労働時間は週35時間(上級職ほど実質労働時間が多くなる傾向)
・一年当たり5週間の有給休暇
・病気の子どものための休暇制度あり
・出産休暇:出産前8週間
      出産後1,2人目は約10週間
      3人目以降は約16週間
      休暇中出産手当として賃金の80%を支給
      休暇後の職場復帰の際同一のポストを保障される
・父親休暇:出産および養子迎え入れ後半年間に14日の休暇取得可能
・育児休暇:3歳未満の子どもを持つ母親・父親が取得。休暇後同一、同等のポストを保障
第1子 6ヶ月
第2子~最長3年

③保育形態
 
*ただし、パリ市では保育ニーズに対するサービスはいまだ不十分。

3.パリ市内託児所視察記

*パリ市内500ヵ所の中、視察先は第7区にあり定員72名。
*生後10週目から3歳までの子どもを保育。
*託児所は子ども同士のふれあい・遊び・自我の目覚めの場であり、幼稚園(3歳以上)は
 小学校入学の準備・教育の場と位置づけられている。
*施設の中は年齢ごとにセクションが決まっており、寝室・図書室・絵画室・シャワー室・運動コーナー・
 ままごとコーナーがありカラフルで充実。運動場はビルなので屋上。
*そうじを完璧にし、衛生面での配慮も行き届いている。
*登園時間は朝7~12時の間、帰宅は夕方6時半までの都合の良い時間で可。
*園長は看護士の資格が必要。少々熱があっても受け入れ、途中で発熱の場合も帰宅させることはない。
 ひどければ救急車を呼ぶ。医師とカウンセラーが週に半日づつ来る。
*託児料は子どもの数によって決まり3.5€(525円)~28.5€(4,275円)、月に20日間まで預かる。
 6時半以降の延長保育はない。(私立は8時まである)
*ほとんどが共働きなので、親の仕事時間によって、託児所と保育ママやベビーシッターなどを
 組み合わせて利用している。


4.「食育」について

― 農学者ナタリー・ポリザー氏の講演を聞いて ―
味覚研究所:J.マクオドールとJ.ピュイザが設立
①どうして味覚教育は必要か?
すべての味を教え、評価できるようにする。(特に苦味)子どもの好き嫌いは社会環境が影響。栄養についてのみの教育より、楽しんで食べることを教える。味わう楽しみは人格形成や他人への理解を深める。

②給食(集団生活の中)でどういう教育を受けているか、また家庭への影響
7歳小学校入学で言葉が豊富になるので、言語表現を重要視している。
1週間1回1時間半7歳から11歳の子どもを対象に教育している。
五感と味覚について・・・視覚・嗅覚・触覚などをすべて使って特別なものでなく日常的に食べているパンなどを使い感じ方の違いを知る。→家庭・出身地・食習慣の違いによって十人十色。お互いの味覚を尊重。家庭での食事時に食品や味に関する子どもの話題が豊富になる。

③味覚教育の変遷
  科学の進歩によって自分の好き嫌いが科学的に証明されるようになる。
  のべ10万人の児童が味覚教育を受けた。

④味覚教育のパートナー
 文部省・自治体が1990年代力を入れて援助してくれていたが、政権政党の交代によって次第に味覚教育への関心が希薄化している。給食の責任は市町村が持っている。10月に味覚週間があるが不十分。

講演者一覧
・ 在フランス日本大使館 牛尾 滋参事官
・ UNAF(家族協会全国連合)CEO
・ フランス家族問題省庁間代表 Mr. Dominique DELEGGE
・ パリ市役所家族・乳幼児部長 Ms. Annic MOREL
・ UFCS(女性市民社会連合) Ms. エリザベート・ルレック
・ 農学者 Ms.Natalie POLITZER

【 まとめ 】
1.二カ国視察を終えて、日本に取り入れたいと思うまたは取り入れられる可能性のある制度・システム

・ 家族問題省創設。
これは、人口問題(少子化を含む)だけでなく高齢者問題、晩婚問題、非婚問題など多角的に家族問題を省庁横断的に検討する時代的・社会的ニーズを改めて感じた。日本では少子化・男女共同参画担当大臣がいるが、省はない。戦後すぐ家族問題としてとらえたことに始まる両国の歴史から学ばなくてはいけない。

・ フランスで、保育所への看護士配置または、園長に看護士資格を求める―これは発熱した子どもを引き取るために、親が仕事を中断せざるを得ない日本の実情から見れば大変即効性のある良い制度である。また、看護士資格を持ちながら出産・育児で休退職した女性の職場復帰にもつながる。
・ スウェーデンでの父親教育は、ぜひ日本に取り入れてほしい制度である。実践的なオムツ交換などの方法だけでなく、精神面での教育に重点を置かれたい。子どもの人生における父親の役割とか、母親となった妻へのいたわりなどを教育してほしいわけだが、誰が教育するかという問題は残される。

2.大阪市独自で取り入れられると思う制度・システム
・今新しく採り入れられようとしている認定子ども園の認定要件として、看護士経験のある人の雇用を義務づける。
・子育て支援センターやトモノスの現在の活動を一種の“育児シェアリング制度”で運営してみてはどうか。単なるサービスの提供ではなく、母親が主体性を持って育て合いをする(短時間でも子育てから解放される)システム作りを行政がコーディネイトする。
つまり、最低限のルール作りを手伝い、あとは自主的な運営を行ってもらう。
・連合単位でやっている”子育てサークル“(類似の名称多数あり)の回数を見直すとともに、運営を自主的なものに移行していってはどうか。
・栄養教諭配置の問題ではどちらかといえば栄養学のほうに偏りがちだが、本当の意味の「食育」を考え、すべての小学校教諭の必須の教科としてはどうか。食材そのものの産地やでき方、味などを通して「食」に対する愛情や関心を高めることが肝要と思う。日々の給食を通して短時間でできるのでは。
・無認可保育所の実態を把握し、劣悪な育児環境から子どもたちを守る施策を立ててほしい。