アメリカ視察
平成19年2月4日(月)
ニューヨーク市議会表敬訪問

ニューヨーク市議会事務局次長ラファエル・ペレス氏の案内で市議会内見学
築100年になる石造りのCity Hall前は翌日にあるN.Yジャイアンツの優勝パレードの最終地点のステージ準備で騒然としていた。大統領選のスーパーチューズデイ絡みのものと勘違いしていた我々。スポーツ好きニューヨーカーの関心の高さから言えば、なるほど納得。持ち物検査や車遮断の仕掛けも日本では見られない物々しさ。市会議員は51名(民主党48共和党3)でSpeakerと呼ばれる代表のもとで、1名が3~5の委員会に属する。来年度2009年度予算は7月に決まるがだいたい6兆円規模。アメリカ議会はほとんどが公聴会制で、文字通り自由に出入りできる。
*(自由研究の項で詳述)

ニューヨーク市議会メリンダ・カッツ議員事務所訪問

メリンダ・カッツ議員と意見交換
 20階建てのビル14階~18階が市会議員のオフィス。メリンダ・カッツ市会議員に面談。しかも女性議員ということで親近感がわく。51名中16~17名が女性だそうだ。(約3割)大阪市は12名/89名が女性議員(約1割強)なので、やはり女性の意思決定機関への進出が増えてくるのが自然だと思う。
定数は人口15万人に1人の市会議員と決められているが市長は議会とは独立した存在。カッツ議員はコントローラーと呼ばれる重要なポストにいる。先日、東京・京都などに行ってきたが、基本的に議員選挙が全く違う。日本で普通一般に行なわれている選挙活動はない。車による街宣活動や演説会もない。有権者リストを購入し、戸別訪問をし、ボランティアによる電話での投票依頼のみ。市議の任期は4年で、2選まで。州議員などへのくら替えも普通にあるらしい。
年収は125000ドル(約1400万円)だがこれは議員自身の生活に充当するもので、事務所・秘書経費等が別に28万ドル(約3000万円)以上支払われ運営費に充てる。政策担当秘書などを複数人、公費で雇うことができる点は大変うらやましい制度である。

(財)自治体国際化協会ニューヨーク事務所訪問

佐々木浩所長、中薗祥所長補佐からBIDについて説明聴取
 アメリカのBID(Business Improvement District:ビジネス改善地区)とは官民パートナーシップによるまちづくり手法である。地区改善のための費用を受益者である地区内の不動産所有者が負担し、この負担金徴収を自治体が行なう(税として強制的に)。地区改善のための組織作りと資金調達のしくみであり、地域活性化の手法である。
アメリカでは連邦制を採用しているので、州によって若干の違いはあるものの、概ね成功している背景には、BIDの運営を地元の代表である非営利地区運営組合(NPO)が担当していることといわれている。
N.Y市内には現在46のBIDがあり、規模も様々であるが、地区内の清掃と集客イベント安全対策などが重要課題であるのは共通している。不動産所有者や商業者が、自分の地区をその責任において発展させるというボトムアップ式のまちづくりがうまく機能している。
BIDのエリアとそうでないエリアでは目に見える違いがある。BIDのエリアは通りの清掃が行き届いており、落書き・張り紙などほとんどない。我々の宿泊ホテルのあるグランドセントラル駅の周辺も路地犯罪が多発したエリアだったが、いち早くBIDに着手。樹木を多く、花のプランターなどで街を飾り、統一感のある標識やゴミ箱を置いたり、歩行者の空間をゆったりとって安全で清潔な街という印象を持たせるものだった。タイムズスクエアBIDやハーレムBIDなども犯罪発生率も劇的に減少し観光事業などにも寄与しているという。
大阪市からも契約管財局の藤井寿光職員が、BIDをテーマにH19.10.25~11.14まで研修。ボトムアップ式のまちづくりは、まちの美化や安全向上がまちの付加価値を高め、住民の利益に還元されるという背景がないとできないのであろうか。行政主導のまちづくりでする悪戦苦闘する大阪市にとっては大変興味深い内容の講義であった。

平成19年2月5日(火)(全行程(財)自治体国際化協会ニューヨーク事務所大東たかし所長補佐同行)
ニューヨーク市保健精神衛生局訪問((財)自治体国際化協会ニューヨーク事務所小濱隆一次長同行)

デイ・ケア部副局長フランク・クレシウロ氏、保育部集団保育課長ルビー・リチャードソン氏から子育て支援策について説明聴取
N.Y市保健精神衛生局とは厚生と精神の健康に関する局。
私たちが訪れたチャイルドケアセンターはN.Yの5つの区全てに設置するように法律で定められている。いわゆる就学前保育の施設について詳しく説明を聴いた。
10000施設あり、30万人が通える。
内訳は①デイケア・センター  2000ヵ所 (公立350/私立1650)
 朝7時~夕方6時・7時というコースと午後5時~朝8時の2コースあり、夜間に働く親のためにビルの中や店舗など多くは商業施設を転用。スタッフ資格は専門学位が必要。公立は州と市から補助金が出て、1割保護者負担。私立はバウチャーシステムで保護者に補助金が出る。
 ②ファミリーベース   8000ヵ所
 アパートの中で子どもを預かる。スタッフ資格は高卒。コストが低く料金も安い。
主に6歳未満が多いが生後6週目から入れる。(産休は3ヶ月の企業が多い)州の仕事を市が請け負っている。予算は州。
その他にも把握されていない非公式施設に3万人の子どもが預けられている。
背景にはクリントン大統領の政策“WELFARE TO WORK” があり、生活保護のような手当てをもらうためには必ず働かなければならないため、子どもを預ける必要が生じたという。またN.Yは生活費が高いため、ほとんどが共働き。大企業は社内託児所を設置している(34ヶ所)がサービスはNPOに委託している。(後述の社内託児所視察はこのとき決まった)
しかし最近では法律が変わり、子どもに与える飲み物に合成甘味料はダメ、低脂肪ミルクを義務付けたり、テレビを見る時間や内容に制限を加えるなど厳しくなっている。
幼稚園(Kinder garden)は5歳以上でプリケー(Pre-Kinder garden)は3歳以上などの就学前教育施設のことは、詳しく聞くことができなかった。やはり教育と福祉はアメリカでも分かれている。

大統領予備選挙投票所(第158パブリックスクール)訪問
((財)自治体国際化協会ニューヨーク事務所佐々木浩所長同行)

米国国務省広報局担当官グレゴリー・ケイ氏の案内で予備選挙投票所となっている第158パブリックスクールを視察
08年1月に始まった大統領選挙の予備選挙。多くの州が、党員にのみ選挙権を与えるクローズド・プライマリー方式をとっているが、私たちが訪れた投票所は他の党や無所属の人にも選挙権を与えるオープン・プライマリー方式をとっていた。この予備選挙によって全国党大会で候補者を選ぶ権限のある代議員の獲得数を競うわけだが、22州~23州同時に予備選挙が行なわれる2月5日がまさしくスーパーチューズデイその日で、予定にはなかった投票所の視察が可能になったのは国務省のご配慮のお陰。まちの中にある普通の小学校で予備選挙が淡々と行なわれていた。テレビなどで見たことのある党大会などの派手なキャンペーン(選挙活動)を想像していたが、あまりにも地味で素朴な予備選挙投票会場に唖然。
N.Yは圧倒的に民主党が優勢といわれ、クリントン候補の地元というのも理由の一つか。
しかしアメリカ大統領選挙は約1年かけて戦う。民主党としてはどちらが選ばれても初の女性候補、初の黒人候補ということで、共和党より圧倒的に民主党が盛り上がりを見せている。大統領選挙はいよいよ8月、9月に正副大統領候補がペアで決定され、11月には有権者による一般投票、12月の各州選挙人による選挙人投票を行い決める。
やはりこれだけの長丁場を戦うだけの体力・知力・集金力等すべてが兼ね備わった人物に、大国のリーダーとなってもらうための手続きだと思えば理解できる。
しかし、アメリカ合衆国は独立した法律・政府・議会を持つ州の集合体なのだということを実感。
分かりにくい選挙制度も、統一されてはいかがなものかと素直な感想を持つが、それは連邦制度の下では無理だということも理解した。

ニューヨーク外国特派員センター訪問((財)自治体国際化協会ニューヨーク事務所佐々木浩所長同行)

米国国務省広報局担当官グレゴリー・ケイ氏の案内でセンターを視察(大統領予備選挙の開票状況ブリーフィングについてはタイミングが合わず受けられず)
さすがは世界の経済・金融の中心N.Y.外国記者の特派員が集まる場所。開票状況を世界に発信する現場が見られると期待もあったが、深夜遅くなるとの事で断念。眠らない街N.Y。
この国務省広報局担当官グレゴリー・ケイ氏は次の赴任地は大阪総領事館だとか・・・大阪の領事館でお目にかかる日も近いのかもしれない。

保育施設ブライト・ホライズン訪問

ジェニーン・マンゲル所長の案内で施設内を視察
屋外のスケート場で有名な75丁目ロックフェラーセンター前に位置する、ロックフェラー・プラザ地
下にあるデイケア・センターを急遽視察させてもらえることになった。世界641ヶ所施設を持つ大手民間企業。ここでは80名ほどの子どもを預かるがなんと9ヶ月から1年まち。妊娠判明と同時に申し込むカップルもいるとか。消防訓練の義務付けや玩具・ベッドなどの完全消毒を行い、トイレトレーニングもしてくれる。至れり尽くせりの保育施設だが、何だか違和感が・・・子どもの私物や名札すべてを色分けしてあり、誰がケアしても間違えないように保育室毎に管理体制が徹底しているし、保護者へは一日の子どもの記録を病院カルテのごとく報告するシステム。生後6週間~14ヶ月:2400ドル/月(約26万円)、15ヶ月~4歳:1900ドル/月(約20万円)、4~5歳:1700ドル/月(約19万円)とべらぼうに高い。就学前まで5年間1日の大半をこの地下の保育施設で育つ子どもたちの親は、いわゆる知識エリートで共働きのため、このように高い保育料を払うことができるのだが、果たして子どもたちはどんな青少年にそして大人に成長して行くのか、心配になった。
メンバーシップ料金を払って法人会員登録している企業も多く、社員が緊急時に時々預かる子どもいるそうだが、一番親とのスキンシップや愛情を全身に受けて育つのが望ましい3歳までに、地下の保育所で徹底管理の下とはいえ毎日毎日過ごす子どもたちを思い、アメリカ社会中枢の現実を見る思いがした。

平成19年2月6日(水)
ワシントンD.C.議会表敬訪問

・委員会(公聴会)を傍聴
・クワミ・ブラウン議員と意見交換
・クワミ・ブラウン議員秘書イルマ
・エスパルザ氏の案内で議会内見学

ワシントンD.C.は全米50州どこにも属さない連邦政府直轄の地区であり、D.C.とは“The District
of Columbia”(コロンビア特別区)の略称であり、アメリカ西部のワシントン州と区別しての呼称。
60万人の人口を有し、13名の議員。うち8区から(下院にあたる)各1名と比例区(上院にあたる)から5名。民主党11名・共和党1名・無所属1名の構成。任期4年で2年ごとに半数ずつ改選。女性議員は13名中6名
ちょうど大型投資の予算ヒヤリングの公聴会が開かれており、議場内で傍聴した。会議中でも出入り自由で、持ち時間内なら誰でも直接議員と意見交換できるオープンな公聴会。持ち時間(3~5分:陳情側も議会側も)が電光掲示されるのは面白かった。ここでも役人は介在しない。
公聴会後経済開発委員会の議長を務め、比例区(At large)選出のブラウン市議会議員と懇談。大阪市の議会は委員会に付託された案件を委員会ごとに、議員が理事者(役人)あるいは首長(市長)に質問する方式をとっているが、N.YでもワシントンD.C.でも住民の意見を直接公聴会で賛否を聞きつつ、議員が他の議員と意見を戦わせながら合意形成を行なう方式をとるという大きな違いがある。
議長は12~13名のスタッフを持つことができ、うち8名は自分用のスタッフ(残りは委員会用)に70万ドル/年(約8000万円)の人件費を市が負担し、事務所や光熱費などの経費は市負担。本人は95000ドル/年(約1000万円)の報酬を生活に充てる。選挙活動はやはり車体にペイントした街宣車やポスターなども貼り、資金集めのイベントや集会を開くなど日本とほぼ同じような感じだ。

議会は大変古い建物だが改築を重ね、大切に使っているという感がある。市長の政策スタッフのお部屋表示が“Mayor’s Bullpen”(市長のブルペン)と書いてあるのはナルホドの感あり。女性スタッフが多いのに驚かされた。市長の執務室も見せていただいたが、現在の市長は37歳の民主党Adrian M. Fentyで任期は4年。家族写真などがいたるところに飾ってあり、アメリカらしい一面を感じたがこんな執務室までオープンに見せていただけるとは思ってなかったので、興味深く拝見した。写真にも写っているが国旗は当然のように掲げてある。

在アメリカ合衆国日本国大使館表敬訪問

・實生(みばえ)泰介参事官より大統領選挙について説明聴取
・林幸宏参事官より米国経済の現状について説明聴取
・加藤良三大使と懇談
外交官にとってもアメリカの大統領選挙のシステムは分かりにくいものらしく、近年の傾向としてはどんどん予備選挙が早く前倒しで行なわれる州が増えてきている(アイオワ州、ニューハンプシャー州など)ことらしい。その理由は、その後の選挙情勢を左右することから候補者が頻繁に来ることによって、メディアが追いかけ全米に放映されることから、経済波及効果がかなり大きいとのこと。また、民主党の代議員は比例配分方式が多いためなかなか候補が決まらない一方で、共和党は総取り方式(Winner take all)が多く、早く決まることなどから予備選挙の結果判別をより判りにくいものとしている。しかも代議員数との逆転現象等が心理面に影響を与えることなど、メディアの報道によって選挙結果は大きく左右されることが問題視されている。

だが、加藤大使(特命全権大使)のお話によれば大統領選挙で誰が選ばれようと、日本との関係は基本的に変らない。大統領の個性や対日感情によく衆目が集まるし、一時的な対日関係はダウンするが必ずすぐ戻る。例えばクリントン元大統領の場合でも就任1年目と7年目は対日認識で大きな変化があったことなどからも分かる。そのふり幅を小さくすることが肝心だとか。そのため、大使として政府内の人脈作りにはいつも苦労するそうだ。政界の優良株のシンクタンクなどとのお付き合いも大切な情報収集であることなど、外交最前線の苦労話も聞かせてもらえた。また、共和党そのものの体質が変ってきていること、民主党の中には共和党から出てもおかしくないような候補が出てきていることも近年の傾向であり、今回の大統領選挙で副大統領が候補者として出ていないのは80年ぶりのことなのだそうだ。
正確かつ端的に大統領選挙における各候補の対日姿勢の話などを大使から直接お伺いできて、なるほど日本の外交上の重要ポストにある人物だけあって、シャープな内容を温和な語り口でお話いただき感激した。

在アメリカ合衆国日本国大使館石井公使主催夕食会

石井正文政務公使、五嶋賢二経済公使、室田幸靖一等書記官、上野裕大一等書記官と夕食をともにしながら懇談
ワシントンD.C.に日本から来る自治体の視察は大変少ないとのこと。たいていシカゴやN.Yが多いとのこと。私見で言えば、地方議員といえども政治の道を志した以上、なんとしてでもワシントンを訪れてみたいとは思わないのか逆に不思議だという気がするのだが・・・・ペンタゴン、ホワイトハウスなどの政府機関が集中し、スミソニアン博物館群、アーリントン墓地などの観光資源(といっていいか?)もあるが、観光客も少ない。アメリカの首都というだけでなく、世界の首都といわれるわりに、落ち着いた閑静な街という印象が残る。
自治体レベルでは通常、大使館視察あるいは大使との懇談がもてることはなく、破格の扱いをしていただいたわけであるが、大変有意義な時間を過ごさせていただいた。
おまけに、開催中のケネディセンター日本文化の紹介イベントの事なども伺い、翌日の日程に組み入れることになった。次から次へと現場での追加日程の多いアクティブな視察は続く。

2月7日(木)
ケネディセンター訪問

ケネディセンターで開催中の「ジャパン! カルチャー+ハイパーカルチャー」展を視察

後ほど報告するサンパウロにおけるブラジルサンバスクールがパレードに使った、デフォルメされ
た日本文化とは違い、古来の日本文化の良さを継承された現代日本文化の正確な、また等身大
の紹介が行なわれており、大変早足ながら見ごたえのある展示であったように思う。
その紹介文を引用すれば、『日の出ずる国』日本では、古代からの伝統が現代感覚と技術革新と組み合わされて、新しいカルチャーを生み出しています。このハイパーカルチャーは巧妙なロボット、アクションいっぱいのアニメ、催眠的な舞踏やエネルギッシュな太鼓など多様な形で表現されています。
ケネディセンターでは2週間にわたって450人以上のアーティストを招聘し40以上のパフォーマンス、12以上の無料イベントで、日本の演劇、ダンス、音楽、ファッション、建築、彫刻、詩、文学、写真、映画のベストの作品を紹介します。2月5日から17日まで、小さい島国ながら世界的インパクトがある日本からの斬新的な芸術をお見逃しなく。
こんな風に日本と日本の現代文化が等身大で評価を受けていることに安堵。後述のブラジル・サンパウロでの日本文化の曲解の話に繋がるが、少なくともここワシントンと日本では物理的距離を超えた共通理解が存在していることを改めて認識した。